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米沢図書館の歴史

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1.米沢図書館のはじまり

初代図書館

初代図書館

 明治42年(1909)10月7日、御守町の法泉寺境内(現・西大通1丁目)に「財団法人 米沢図書館」が開館しました。その場所は、直江兼続が「禅林文庫」を創設した由緒ある場所で、木造2階建ての本館と、土蔵が併設され、一般公開は10月17日より行われました。
 その2年前、「図書館財団設立趣意書」が提唱され、図書館建設へ募金が呼びかけられました。郷土史家であり、のち第2代目館長となる伊佐早謙らが提唱した「趣旨書」には、社会の文化を進める事業の一環として学校に次いで有効なものであり、先進諸国で盛んに設立されているのが図書館だと述べられています。 初代図書館長には、その「趣意書」を提唱した一人でもある県立米沢中学校校長の松山亮が就任し、山形県知事馬淵鋭太郎、上杉茂憲(上杉家14代当主)、高梨源五郎(興譲館財団理事長)等を迎え、盛大な開館式が行われました。

閲覧室

閲覧室

 開館時の蔵書は、興譲館財団から寄贈の珍書955冊や和漢書11,645冊、新たに購入した和漢書935冊と洋書類65冊の計13,600冊でした。この興譲館財団から寄贈された書籍類は、藩校興譲館に伝来したものが主なもので、その蔵書には「米澤蔵書」(藩の書庫の蔵書印)や「麻谷(まこく)蔵書」(藩の江戸中屋敷である麻布邸の蔵書印)等の蔵書印が捺されています。その中には、上杉鷹山の蔵書である「稽古堂蔵書」もあり、他の多くの貴重な書籍も含め、現在も図書館に伝わっています。

 図書を読むのは有料で、1回の閲覧に1枚1銭(現在のお金で約200円ほど)、7枚綴り5銭の閲覧券が必要でした。当時、全国的に図書の閲覧は有料で、昭和25年(1950)に図書館法が制定されてから無料となりました。また、閲覧も男女別に分けられていて「米沢図書館平面略図」を見ると、2階に「婦人室」があり、女性はそこで閲覧していました。現代の図書館からすると不自由さを感じますが、「米沢図書館規則」第二条には、「何人ニテモ満十二歳以上ノ者ハ本館ニ来リテ図書ノ閲覧」ができると書いてあり、明治以前には見ることができなかった書籍を誰でも見ることができるようになったことはとても意義あることだったと思われます。 開館した明治42年10月17日~翌年9月30日までの閲覧者数は、5,875人(1日平均約20人)でした。 その後、昭和13年(1938)4月、財団は建物、蔵書すべてを市に寄贈し、名称を「市立米沢図書館」に改称、市営として安定した財政基盤で運営され始めました。

コラム1 伊佐早謙(1857~1930)郷土史家

第2代館長 伊佐早謙

第2代館長 伊佐早謙

 安政4年(1857)、上花沢信濃町(現・東1丁目)に生まれ、興譲館提学片山弦斉の門下で漢学を学びました。明治14年、山形師範学校三等助教諭となりますが、現職のまま明治18年(1885)上京し、中村正直(なかむらまさなお)(1832~1891)の私塾である同人社で学び、教授嘱託となりましたが、その後米沢に戻り、明治19年(1886)には米沢中学校の教諭、明治23年(1890)からは上杉家記録編集所に総裁として勤務しました。
 さらに図書館の創立に尽力し、「図書館財団設立趣意書」に発起人の一人として名を連ね、大正10年(1921)には初代館長の松山亮の後を継ぎ、二代目館長に就任しました。

「林泉文庫寄贈書及書目」

「林泉文庫寄贈書及書目」

 また、林泉寺町にあった自宅に書庫を設け、町名に因み「林泉文庫」と称して書籍の収集に努めました。昭和5年(1930)遺言により、上杉家に蔵書が寄贈され、その一部が図書館に寄託されました。その後、郷土に関する書籍を図書館が購入し、現在も「林泉文庫」として伝わっています。また文庫の一部の蔵書は、瑞龍院龍門図書館(白鷹町)や米沢女子短期大学附属図書館、山形大学付属図書館に所蔵されています。

 伊佐早館長時代、米沢は2度の大火に見舞われます。大正6年(1917)には、代官町(現・城西3丁目)より出火し、花沢・福田方面まで焼失、大正8年(1919)には舘山口町より出火し三十余町が焼失しました。この米沢市街の大半を焼いた火事を図書館は辛うじて免れましたが、伊佐早館長は危機感を抱き、珍書文庫(石倉)の設計を計画、募金を呼びかけ、大正11年(1922)に完成、貴重書をそこで保管しました。

2.お堀端の2代目図書館

2代目図書館

2代目図書館

 昭和28年(1953)、教育制度発布80周年記念事業の一環として新図書館の建設が決定しました。法泉寺からの借地契約も期限が切れ、また一方で昭和25年(1950)に図書館法が制定され、新しい時代の図書館の設置が望まれました。

 昭和29年(1954)7月14日に開館した新館は、米沢郷土資料館を併設した木造モルタル2階建て、ギリシャ建築風のモダンな建物でした。正面のレリーフは米沢出身の彫刻家桜井祐一が製作しました。現在、米沢市立第一中学校に移設されています。
 また同年、上杉家所蔵の近世古文書約5,000点が図書館に寄贈され、「上杉文書」と名付けて、目録整理を行いました。米沢藩士を調べるための基本史料である「先祖書」や法令集「御代々御式目」など、現在も頻繁に利用される資料がこのとき寄贈されたのです。なお、上杉文書は平成11年(1999)に、米沢市上杉博物館へ移管されました。
 一方、昭和13年(1938)に上杉家から寄託されていた「林泉文庫」(第2代館長 伊佐早謙の蔵書)の一部を購入、現在も図書館に所蔵されています。

【米沢善本の整理】

直江版「文選」(米沢善本100)

直江版「文選」(米沢善本100)

 

 昭和31年(1956)、同志社大学の内田智雄氏(中国思想史学者)による上杉家の漢籍の調査が機縁となり、ハーバード燕京研究所の資金援助を得た京都大学人文科学研究所を中心とした10数名が来訪。昭和32年(1957) 8月21日より10日間かけて、当館の古典籍の調査が行われました。そのうち特に貴重だと思われる208点に解題をつけ、「米沢善本」と名付け、その調査成果が米沢市制70年の記念事業の一つとして、『米澤善本の研究と解題』としてまとめられ出版されました。その後、「米沢善本」は昭和60年(1985)に米沢市の文化財指定を受けました。

 2代目の図書館は、市町村合併による市域拡大に対応し、地域での図書館奉仕活動も盛んに行われました。各地域の出張所(公民館)へ図書を配本する「巡回文庫」を昭和30(1955)年から開始しました。昭和38(1963)年にはさらなる充実を図り、米沢青年会議所から寄贈を受けた「ひまわり号(自動車文庫)」で、図書館を利用しにくい地域や事業所に赴き、図書を届けてきました。

 また、今年で61回目を迎える長寿講座である「古文書解読講座」は、昭和37年(1962)に第1回目が開始されました。このほかレコードコンサートの開催や、「図書館だより」を発行するなど、市民のニーズに合わせた図書館活動を続けてきました。

コラム2 戦争と図書館

 昭和16年(1941)12月、日本は太平洋戦争に突入し、次第に戦時色が強くなると、図書館活動にも様々な影響が表れました。書籍の出版も統制されるようになり、翌年には、社団法人日本図書館協会が実施する新刊図書優先配給に加入し、書籍を購入していました。

 そうした状況の中で軍人応召により青年層の閲覧が減少、さらに空襲警戒警報が発令されるようになると夜間開館が廃止となりました。

「追放図書」

「追放図書」と書かれた書籍

 昭和20年(1945)に入ると、東京など各地の空襲の報が伝わり、危機感を覚えた館は7月17日、空襲に備えるために事務室の物品等を土蔵に搬入、また7月末には郊外の塩井村の農家3家の土蔵を借りて、貴重書を疎開しました。

 また、8月4日には憲兵隊屯所に指定され、閲覧・貸出が中止されました。同月9日、アメリカ軍グラマン戦闘機が飛来し、南原大平付近に爆弾を投下、また広幡京塚地域にも爆撃があり、日誌にも「米沢初空襲」の記載が見られます。

 その数日後に終戦を迎えましたが、当日の日誌には「重大ナル時局ナルコトヲ覚悟スベキノ秋ナリ」と記されています。戦後、憲兵は引き揚げ、疎開していた書籍も徐々に戻ってきましたが、進駐軍の命令で警察が書庫に入り、軍国主義を宣揚する書籍等が数千冊没収されるなど、平常に戻るまでには多くの日数を要しました。

3.3代目図書館(置賜総合文化センター内)

3代目図書館入口

3代目図書館入口(平成元年撮影)

 2代目図書館が老朽化し、昭和50年(1975)7月8日、3代目の米沢図書館が置賜総合文化センター内に開館しました。2代目図書館は、分館「こども図書館」として昭和57年(1982)まで利用されました。

 3代目の図書館には、一般閲覧室・児童閲覧室・古文書研究室(のちの市史編纂室、郷土資料室)・書庫などが設けられました。置賜総合文化センターは、1階に図書館(のべ床面積1,849㎡)、2階に中央公民館、3階に青年の家、4階に視聴覚センターを配置した市民の社会教育の場所として、長年利用されてきました。

第1回読書感想画展(昭和52年)

第1回読書感想画展(昭和52年)

 この時代の図書館は、社会教育や生涯学習の場としても盛んに活用されました。当館でも、昭和60年(1985)に、社会人向けに「ふるさと歴史講座」、平成2年(1990)には「古典文学講座」を開始し、現在でも好評を博しています。また、乳幼児に紙芝居や絵本を読む「おはなしかい」(昭和63年開始)や「米沢市小中学生読書感想画展」など、利用者のニーズに合わせて事業を開催してきました。

 また平成16年(2004)には郷土資料室を設置し、米沢の歴史などさまざまなレファレンスに応えるサービスも展開してきました。

 

米沢善本は、すべて当館「デジタルライブラリー」で見ることができます。

米沢善本は、すべて当館「デジタルライブラリー」で見ることができます。

 

 平成24~25年(2012-2013)にかけては、公益財団法人図書館振興財団からの助成金により、米沢善本や林泉文庫等の貴重書のなかでも利用希望が多いものを選択し、デジタル化を行いました。その成果を、平成25年3月から図書館のHP「市立米沢図書館デジタルライブラリー」で公開しています。

 

 

 その後、3代目の図書館も開架閲覧スペースや書庫が手狭となり、また駐車場の不足も指摘される中、念願の市民ギャラリーの新設を含めた整備計画が「米沢市まちづくり総合計画」に位置付けられました。平成22年(2010)、新図書館と新市民ギャラリーのそれぞれの整備の内容が検討され、翌年、それらを受けて「新文化複合施設整備事業基本構想」を策定、新図書館が目指す姿として、①新しい時代に対応する市民のための図書館 ②貴重な郷土資料を活かしていく図書館 ③さまざまなネットワークとつながる図書館 ④市民が育てる開かれた図書館の4つの柱が掲げられました。

 その後、紆余曲折を経てようやく現在の場所に図書館の建設が決まり、旧図書館は平成28年(2016)2月末日で休館し、移転準備に取り掛かりました。4ヶ月かけて引っ越しを終えた新図書館は、同年7月1日に開館。今年、108年目を迎える米沢図書館は、より一層市民のための図書館になるよう努力を重ねてまいります。

 

4代目図書館ナセBA

4代目図書館ナセBA

 

◇参考文献◇

市立米沢図書館発行『米沢善本の研究と解題』(1958年)
日本図書館協会編『近代日本図書館の歩み 地方篇』(1992年)
米沢市史編さん委員会編『米沢市史 第四巻 近代篇』(1995年)
市立米沢図書館編『米沢図書館100年』(2009年)

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