2020_haru-daidokoro-2―やっぱり家の中心は、台所かもしれない―

 随筆家山本ふみこさんの著書『台所から子どもたちへ』(オレンジページ、2013年刊)にこんな一文があります。「台所に興味がある。食べものが生まれる場所だから……でもあるけれど、ひとが、ものを考える場所だからである。」
今や台所に立つ人は、多様です。父親、母親、ひとり暮らしの人、あるいは子どもたち。日々の暮らしの中で食事をつくる場所であり、一杯のお茶を飲むためにも立つ場所でもあります。そして台所は料理の火加減を見ながら、鍋をかき回しながらその日あった事に思いを巡らせる場所なのかもしれません。
さあ、春はその台所が特に忙しくなります。お祝いやお弁当作り、お店に溢れはじめる春の野菜もひかえています。今回はそんな春の台所をテーマに、多様な本をご紹介します。朝は慌ただしく、昼はほっと一息、夜は一日の疲れを癒してくれる台所。そんないつもの台所を、ときめかせる方法をぜひ見つけてください。

[サイドコーナー] 栗原はるみさんと玲児さん

2020_haru-daidokoro-3 料理家栗原はるみさんの夫玲児さんが、昨年8月85歳でなくなられました。玲児さんは元キャスターで、事業面でも妻はるみさんの仕事を支え、公私ともに二人で歩んできた人生でした。
 ご紹介するのは、先日2月17日朝日新聞に掲載された栗原はるみさんの夫玲児さんへの思いです。はるみさんの喪失感の深さを感じると同時に、台所がお二人の大切な場所であったことを、私たちはあらためて気づかされました。
 家族のために心を込めてつくる料理、そしてそれを作り出す台所。
 台所は家の中心であり、心の中心なのかもしれません。