皆さんは、“禁書”にどんなイメージをもつだろうか。

 “禁書”という言葉は、印象において少なからず重い。その意味を調べると、「思想弾圧・軍機保護などの目的で、公共に害があるとして、政府が書籍の刊行・所蔵を禁止すること」と記されている。

 実は今、この“禁書”が、アメリカで大きな問題となっている。報道によると、近年アメリカの学校の図書館から、一部の市民から異議申し立てを受けた本が次々と撤去されているという。その中には、長年世界中で読み継がれた名作のタイトルもある。2023年1月から8月まで、全米の学校・公共・学術図書館の蔵書1915タイトルが、閲覧制限の申し立ての対象になったという。その背景には、アメリカ国内の保守派とリベラル派の価値観の違いによる対立があると報道は分析する。

 そんな中、アメリカの学校での禁書事情を背景に描かれた児童文学が、数年前話題を呼んだ。児童向けに多くの作品を発表するアメリカの作家アラン・グラッツの『貸出禁止の本をすくえ!』(ほるぷ出版 2019年刊)である。主人公の小学4年生の少女エイミー・アンは、ある日学校の図書室にあったお気に入りの本が貸出禁止になっていることを知る。それは、あの名作『クローディアの秘密』だった。この衝撃的な出来事から、エイミー・アンは、仲間たちと共に、大好きな本のために行動を起こす。

 アメリカと日本の制度・社会情勢の違いはあるが、この本は大きな問いかけを私たち日本の読者にも投げかけている。今回は、『貸出禁止の本をすくえ!』の巻末にある、過去三十年間にアメリカの図書館で異議申し立てや貸出禁止を受けた本のリストから、当図書館に所蔵のある本をご紹介したい。また、あわせて世界中で様々な時代に禁書という扱いを受けたことのある本も、この場所で同じく紹介したい.

   参照『広辞苑』(第七版)新村出編 岩波書店 
   参考出典 図書館に関する情報ポータル「Current Awareness Portal」2023.9.26カレントアウェアネス-R より