― 絵師集団狩野派の軌跡 ―

  現在米沢市上杉博物館に所蔵されている、国宝「上杉本洛中洛外図屏風」は、天正2年(1574年)織田信長から上杉謙信に贈られたと伝えられている。
この桃山時代を代表する傑作を描いた時、画家狩野永徳は23歳の若さだった。そこに天才といわれる永徳の片鱗を垣間見ることができる。
永徳は、この時代の大がかりな絵画制作注文を数多く引き受けていた。その頃に、注文した依頼主に制作の遅れを謝る手紙を送っていたという。そして多忙の中、天正18年9月14日、父松栄に先立ち48歳で夭逝した。過労のためだったのはないかという説もあり、まさに時代を駆け抜けていった天才絵師であったといえる。その後絵師集団狩野派は、長く日本の美術界をリードしつつ、時代の移り変わりとともにその役割を終えていった。

 今永徳没後430年余りがたち、若き天才絵師が描いたその傑作は米沢市の上杉博物館にある。400年以上世に残る作品を残した一人の絵師の人生を、今回は図書館で多様なジャンルの本から思いをはせるのはどうだろう。ともに時代を駆け抜けた天下人、狩野派以外の絵師たちの作品、そしてなんといっても「国宝洛中洛外図屏風」に関する本もおすすめしたい。