有吉(※)佐和子著書、『青い壷』は長らく絶版状態にありましたが、2011年に復刊し、口コミでじわじわとその人気を伸ばしていました。2023年、作家・原田ひ香の推薦文が載った帯のデザインに変わったことでその売り上げは向上。メディアなどでも取り上げられるようになり、累計販売部数は今や75万部を超えています。

 『青い壷』は、1977年(昭和52年)に刊行された13の連作短編集です。物語の主軸になるのは、ある陶芸家が作った“青い壷”。時には売られ、時には盗まれ、さまざまな理由で置かれる場所を変えていきます。世代も、経済状況も、家族構成も違う13の家庭。その中で描かれる昭和の生活は、現代を生きる私たちには新鮮に映ります。しかし、人間関係やお金に悩む様子は、どこか私たちと通ずるものがあるように感じられます。令和のこの時代に『青い壷』が多くの人に親しまれた背景には、そんな時代を感じさせない共感しやすさもあったのではないでしょうか。

 さて、今年、2025年は昭和100年の年にあたります。昭和を生きた有吉佐和子は、どんな生活を送り、何を感じ、『青い壷』を書き上げたのでしょうか。懐かしい昭和の時代を振り返りながら、掘り下げていきたいと思います。

※「吉」は下が長い「土吉」


展示期間 2025.11.28-2026.1.21