池波正太郎。司馬遼太郎。共に大正12年(1923)生まれ。同じ時代を生きながら、異なる作風で読み手を魅了し続け、時代小説の一時代を築いた二人の大作家は今年生誕100年を迎えた。没後今もなお、その功績と人気は衰え知らずであり、数多くの作品が大河ドラマや映画化になったことで、時代小説が苦手な人でもその世界観をより身近に感じることが出来たのではないだろうか。

 池波正太郎の作品といえば『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛け人・藤枝梅安』『真田太平記』など戦国・江戸時代を舞台とし、作品のなかに悪党や庶民に寄り添う物語が多い。一方、司馬遼太郎は『竜馬がゆく』『燃えよ剣』『坂の上の雲』など幕末を含む江戸時代の作品のほか、『街道をゆく』をはじめとする多数の随筆・紀行文のなかで、人間の本質を追い求めた。

 作風の違う二人ではあったが、同じ1923年生まれで、1960年の同じ年に池波正太郎は『錯乱』で第43回、司馬遼太郎は『梟の城』で第42回の直木賞を受賞していることから時代小説や歴史小説の分野で互いを尊敬し合っており、家を行き合うほど親交も深かったようだ。また同じ1923年といえば、東京神奈川を中心とする南関東で10万人以上の死者・行方不明者を出した関東大震災が発生した年である。司馬遼太郎は大阪で生まれたため被災はしていないが、東京・浅草で生まれた池波正太郎はこの未曾有の大惨事を体験している。

 人生を楽しみ、人情を愛した国民的作家・池波正太郎。「日本とは何か」を問い続けた国民的作家・司馬遼太郎。特集3では、100年の節目となる今、二人の偉大な作家の軌跡を訪ね歩いてみたい。

 

特集期間:8/25(金)~10/25(水)